大物ミュージシャンたちが集まった『We Are The World』(ウィー・アー・ザ・ワールド)の、レコーディング収録の一夜を描いたネットフリックスのドキュメンタリー、『The Greatest Night in Pop』(邦題「ポップスが最高に輝いた夜」)のあらすじ・ネタバレを記事にした本日。
今年2024年1月にリリースされたドキュメンタリーで、ご覧になった方も多いと思いますが、コレは本当におススメでしたので、もう2月末ですが(笑)頑張ってネタバレシリーズを書くことに。
「ネットフリックスに入ってない」という方は、YouTubeで「ウィー・アー・ザ・ワールド」の映像付きフルバージョンを視聴しながら、この記事を読めばドキュメンタリーを見た気にちょっとなれると思います。
なぜなら記事の後半は「We Are The World」を歌う歌手の順番で、ドキュメンタリーに登場しているアーティストたちを紹介していく、親切な私だからです!( ←自画自賛)
「洋楽とか興味ナス」な方も、ちょっとお待ちください。
私も年代が下ですし、『We Are The World』は「スティーヴィー・ワンダーがたくさんの歌手と歌ってる曲」くらいの認識しかなかったんです(恥)。
特にカントリーやロックミュージシャンに詳しくない…
そんな私ですら自然と涙がこぼれた、「魂を揺すぶられるドキュメンタリー」です。
と言うことで早速ネタバレ!
運命の日は1985年1月28日!
舞台は1985年1月のLAです。
(記事内のアーティストたちの年齢は、現在2024年2月での年齢と、故人は亡くなった享年)
ライオネル・リッチー(74)が、当時自分の新しいだったマネージャー、ケン・クレイガンから、ハリー・べラフォンテに飢餓に直面しているアフリカ諸国の子供たちを救うために、曲を作って欲しいと重大なプロジェクトを任されます。
ライオネルは業界の大物ミュージシャン兼音楽プロデューサーのクインシー・ジョーンズ(90)に電話。
クインシーから「明日マイケル・ジャクソンに会うから、話をしてみるよ」と言われたライオネル・リッチー。
「曲作りと言えばスティーヴィー・ワンダーだな」とスティーヴィー・ワンダー(73)に電話。
しかしスティーヴィーがつかまらないし、折り返し電話もない(笑)
そこでモータウン時代から仲が良かったライオネルとマイケル・ジャクソン(享年50)は、マイケルの家で曲作りを開始。
ちなみにマイケルは楽器類を一切弾かないので、作曲は全てハミングをテープに収録していく手法だったそうな。
長くなるのでかなり端折りますが、曲作りを頑張っている間(実はあまり頑張っていない)、プロデューサーたちは、このチャリティー新曲を歌う大物スターたちを、どうやって集めようかと試行錯誤しています。
80年代と言えば、今の様にスマホはおろか携帯電話や、ネットが普及していなかった時代。
しかも大物ミュージシャンたちは何ヶ月も先までスケジュールが埋まっている…。
でもアフリカの飢餓を救うためのこのチャリティーのプロジェクトに、多くの大物ミュージシャンたちに参加して欲しい…
そんな中スタッフは、1月28日にLAで開催される『アメリカン・ミュージック・アワード』(以下AMA)が絶好の機会だと気づきます。
しかもこの年のAMAの司会はライオネル・リッチー。
多くのミュージシャンたちが出席するAMA授賞式の後、LAのスタジオに招待し、そこで曲を収録しようと、マスコミに漏れないようにと極秘プロジェクトを計画します。
そして「曲もできていないのに時間もねーな(汗)」と焦るライオネルとマイケルですが、なんとか主要メロディが決まりました…(ほっ)
スタジオに集まった47人の豪華な一流ミュージシャンたち
1月28日のAMA授賞式後…
47人のミュージシャンたちが1つのスタジオに集まり、みんなで「We Are The World」のコーラスの収録が始まったのが、午後10時頃です。
(集まったアーティストの人数は45人説がありますが、ドキュメンタリーの中でライオネル・リッチーは47人と言っています)
曲のウィー・アー・ザ・ワールドもまだ試行錯誤中で、47人も大スターが集まっているので、なんやかんやあるのですが、長くなるので端折ります。
この前半部分のドキュメンタリーの最大の注目は、当時マイケル・ジャクソンのライバルと言われていた、歌手のプリンス(享年57)が「We Are The World」のレコーディングに来るか来ないのか、というくだりです。
当時プリンスはシーラ・E(66)と交際中で、2人ともAMAに出席。
(この年のAMAでマイケル・ジャクソンを制したプリンスは、8部門にノミネート、3つの賞を受賞)
シーラ・Eはライオネル・リッチーから「プリンスと verse (ヴァース=Aメロ)を歌って欲しい」と言われて、「We Are The World」の収録に参加。
しかし結局、プリンスは収録に来なかったんですね。
収録が始まってからも、ライオネルが電話でプリンスに説得を続けたそうですが、「別の部屋で、1人でギターの収録でWe Are The Worldに参加したい」と言うプリンスに、「いやいやいや、みんな一斉に1つの部屋で収録しているんだよ」とライオネルが諭すも、結局プリンスは収録に姿を見せませんでした。
しかもシーラ・Eも、ソロの verse を与えられずにコーラスのみの参加だったので、「私はプリンスを呼ぶために使われただけなのね」と寂しそうにする一場面も。
ちなみにレコーディング当日に姿を見せたスティーヴィー・ワンダー。
曲を作る気満々で登場したのですが、既にマイケルとライオネルが曲を作っていて、驚いたそうな。
「なんだよ~、曲作るなら言ってくれれば良かったのに~」と残念そうなスティーヴィーに、「いやもう3週間前から言ってたやん(でも連絡取れなかったのは自分やん)」とライオネルは思ったそうです(笑)
個々の実力を見せつける、ソロパート担当の大物ミュージシャンたち
コーラス部分(♪We are the world, We are the children~等)の収録が終わった後は、ソロパートに選ばれたミュージシャンたちの収録。
確かもう既に早朝4時頃だったはず。
徹夜の疲れもたまり、ピリピリとした空気が流れるレコーディング・スタジオに、プロデューサーたちの指示で、3〜4人組づつのグループで、歌う順番に分かれて並ぶミュージシャンたち。
3〜4人で1つのマイクに、順番でソロとハモリ部分を歌って次のグループへ繋いでいきます。
ここからは、ネトフリが見れない方はYouTubeなどの「We Are The World」のフルバージョン(アーティストの映像付き)をご用意しながら、お読みください。
最初の4人組みはライオネル・リッチー、スティーヴィー・ワンダー、ポール・サイモン(サイモン&ガーファンクル)、故ケニー・ロジャース(享年81)。
「We Are The World」の冒頭をライオネル、スティーヴィー、ポールの透明感があり奇麗な声の3人が歌い、4番目の故ケニー・ロジャースでやや重みを持たせています。
そこから故ジェームス・イングラムと故ティナ・ターナーで、一気にソウルフルな重厚感。
続いてビリー・ジョエル(74)から、故マイケル・ジャクソンとダイアナ・ロス(79)の高音で、2人の天使の歌声のソロとハモリ。
そこへディオンヌ・ワーウィック(83)でまたソウルへ戻り、ウィリー・ネルソン(90)でカントリーボイスか~ら~の~、故アル・ジャロウのジャズボイス。
ちなみにアル・ジャロウは収録中に、はしゃいで飲み過ぎて酔っ払っているので、ソロとハモリのパートを何度も間違えます(笑)
このグループはディオンヌのマイクの故障と言うハプニングもありましたわ。
すったもんだのあったこのグループの後は、ブルース・スプリングスティーン(74)のブルドーザーボイス(←勝手に命名)でものすごい破壊力。
ちなみにブルース(74)は前日の1月27日にツアーを終えたばかりで、AMA授賞式にすら出席していないんですね。
ツアー後なのでブルース本人も認めておりますが、声も本調子の様には出ませんし、かなりお疲れなのですが、やっぱり本当にすごい歌唱力です。
その後はイケメン・トリオの3人です。
イケメンなだけでなく、歌唱力も抜群の3人が続きます。
映画「フットルース」の主題歌でもおなじみのケニー・ロギンス(76)、「ジャーニー」の初代ボーカルで、音楽界でも最高峰の1人と言われる高音を誇るスティーヴ・ペリー(75)、胸を打つ熱唱のダリル・ホール(77)。
個人的にはブルース・スプリングスティーンからの、ケニー・ロギンス、スティーヴ・ペリー、ダリル・ホールのくだりが最高に好きです。
そして再びマイケル・ジャクソンのソロ。
続きまして、来なかったプリンスの代わりにソロ部分に抜擢され、脚が震えるほど緊張したと言うヒューイ・ルイス(73)。
続いてパワー全開のシンディ・ローパー(70)とキム・カーンズ(78)。
ちなみにシンディ・ローパーは、ゴチャゴチャと大量に着けていたイヤリングやネックレスが雑音として収録に入り込むと言うハプニングが(笑)
みんなのノリについていけず、上手く歌えないボブ・ディラン
その後は全員でのコーラス部分がしばらく続き、そこからボブ・ディラン(82)のソロ。
怒られそうですが、個人的にはどうしても志村けんさんにしか見えない・聞こえないボブ・ディランですが、そのボブのシーンが泣けるんですよ。
前半の全員でのコーラス部分でも、みんなに馴染めずに浮いてしまい、コーラスさえもちゃんと歌えないボブ・ディラン。
ボブ・ディランは独特の歌唱スタイルなので、We Are The Worldをどうやって歌って良いのか分からず、困惑しているんですね。
その場でスティーヴィー・ワンダーに、ピアノでの個人レッスンをお願いするボブ・ディラン。
するとモノマネが神業的に上手いがスティーヴィーがピアノを弾き、ボブのモノマネをしながら「こうやって歌ったら良いんだよ」と教えてあげるんです。
そこで自分の歌い方・スタイルで良いのかと、自信を取り戻して笑顔を見せるボブ・ディラン。
ソロパートを歌い終えてもまだ自信が無さげなのですが、クインシー・ジョーンズから良かったよ、と言われてはにかんだボブ・ディランに胸アツでしたわ。
多くのミュージシャンたちから尊敬されているボブ・ディランでも、ああやって緊張したり、自信を失いかけたりして、そして最後には少年のように嬉しそうにはにかむんですね…(ほっこり)
ボブ・ディランのあとは再び全員でのコーラス。
その後は神・ゴッドこと、故レイ・チャールズ(73)。
ちなみに収録の休憩中、お手洗いに行きたいと言ったレイ・チャールズ(全盲)に、同じく全盲のスティーヴィー・ワンダーが「僕が連れて行ってあげるよ」と腕を組んで、2人でトイレに向かったそうです(笑)
未だ業界で消えない、スティーヴィー・ワンダーの「ほんとは見えているんやろ説」(笑)
(説はシャレで、盲目でございます)
ゴッドの後は、スティーヴィー・ワンダーとブルース・スプリングスティーンの掛け合い。
(スティーヴィーの洋服が違うので、ここの部分のスティーヴィーだけ後日別収録?)
本当に素晴らし過ぎて、訳もなく号泣(PMS?)。
この部分の映像自体は、ドキュメンタリーに含まれておりませんけれども。
個人的にはスティーヴィー・ワンダーの高音部分の歌い方に、毎回自然と涙がでますが、We Are The World の終盤のスティーヴィー・ワンダーの熱唱は、本当に感動もので言葉が見つからないというか、言葉が不要。
スティーヴィー・ワンダーの透き通る声と、ブルース・スプリングスティーンのハスキーな声の対比もすごいんですよね。
We Are The Worldを最後までフルで聴いたことないと言う方は、終盤のスティーヴィーとブルースをぜひ聴いていただきたい。
曲のラストは再びジェームス・イングラムとレイ・チャールズ、そして全員でのコーラスです。
ドキュメンタリーで明かされるスターたちの秘話
上記で紹介した以外のレコーディング秘話は…
マイケル・ジャクソンは当初、作詞作曲のみで歌うつもりはなかった(歌いたくなかった)
「師匠、歌ってくださってありがとうございます」ですよ。
邪気のない少年のような優しくて繊細な声に、抜群の歌唱力はもちろんのこと、曲作りの才能もずば抜けていたことを改めて感じさせられました。
80年代のマイケル・ジャクソンと言えば、スーパースターの頂点の1人でしたが、傲慢さとか偉ぶったところが一切見受けられないんですよね、ドキュメンタリーの中で。
レコーディング中も最高にお上手なのに、「こんな感じでどうかな?」と周りの人たちに聞いたりしていて、すごい人だなと思いました。
ダイアナ・ロスがきっかけで、スターたちがみんなでサイン交換!
夜の10時に始まり、徹夜で朝の8時くらいまでかかったレコーディング。
休憩中にダイアナ・ロスが、ファンだったダリル・ホールに「We Are The World 」の楽譜へのサインをお願いするんですね。
そこから他のミュージシャンたちも、俺もあの人のサインが欲しい、私も欲しい、とみんなでサイン交換が始まります。
みなさん大物ミュージシャンたちなのに、彼らでも憧れのミュージシャンに会ってはしゃいだりするんだなぁと、微笑ましくなりました。
レコーディングに立ち会ったスタッフさん、裏方さんたちのお話もすばらしくて、字数の関係でここでご紹介できないのが残念ですわ。
ライオネル・リッチーはAMAで6つの賞を受賞
AMAで司会を務めながら、6つも賞を受賞したライオネル・リッチー。
でもそんなAMA授賞式の大役や受賞がかすむほど、「We Are The World」のレコーディングの方が素晴らしかったと語っておりました。
レコーディング中に、大物ミュージシャンたちをまとめたり、仲を取り持ったり、ムードメイカーの役割をしていたのもライオネル・リッチーでした。
同じく、いつもニコニコ楽しいスティーヴィー・ワンダーも、周りの人を笑顔にさせるムードメーカーでしたね。
クインシー・ジョーンズのリーダーシップも抜群でした。
大御所たちの現在の姿も
ドキュメンタリーではライオネル・リッチーをはじめ、ブルース・スプリングスティーン、ヒューイ・ルイス、シンディ・ローパーなどのインタビューもあるので、現在の元気なお姿も見ることができます。
ブルースに関しては、74歳の今の方がカッコイイような(笑)
最後に…
超長文になりましたが、本当にNetflixで1番と言っても過言でないほど、おすすめのドキュメンタリーが『The Greatest Night in Pop』(ポップスが最高に輝いた夜)です。
シネマの映画じゃないのが不思議なくらい。
オートチューンなど使わずに、「本物」のミュージシャンたちの荒削りの声・歌を、しかもチャリティーのために作られた曲で聴くことができ、「We Are The World」の素晴らしさを改めて実感。
(ちなみにみなさんノーギャラですよね、売り上げはチャリティーで寄付にまわったので。裏方のスタッフさんたちもノーギャラ、ボランティアと知らされていなかったものの、最高の思い出になったと笑顔でした)
贅沢な不満が1つあるとすれば、「このドキュメンタリーを作るのに、なぜ40年近くもかかったんすか~。もっと早く作って欲しかったっすよ~」ってことくらいでしょうか。笑
お亡くなりになったミュージシャンの方々もいらっしゃいますもんね。
以上、長文のご精読ありがとうございました。
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